振り向けばヌエがいる

人生において1ミクロンも役立たないであろうことを丁寧に綴るブログ

カゴに埋もれて身悶えたい

うちにはカゴがたくさんある。10個とかそういうレベルではない。先日は家族に、「保険証はどこ?」って聞かれて、「リビングにあるカゴの中だよー」って答えたら、リビングだけでもカゴが軽く15個以上はあるので、どのカゴだよって軽くキレられた。

発端は私がかつて世界の僻地をバックパック一つで放浪していたときのこと。世界には、それはそれは美しいカゴがたくさん存在していて、そこに暮らす人たちの生活の一部として溶け込みつつも、カゴ本来の役割を全うしながら美しく朽ちていた。どれもこれも超絶欲しかったが、長期の旅の途中にカゴなんぞ買おうものならば、それをずっと手にもって移動しなければいけない。送るにしてもかさばるし、郵送途中に壊れそう、絶対にムリ。そんなわけで、いつも泣く泣く諦めて帰ってくるから余計に、カゴへの愛は膨らんだ。

いつか、私も素敵なカゴ使いになりたい!いつしか素敵なカゴに出くわすたびに、せっせと買い集めるようになった。

私の住む地域には、なぜだかカゴを扱うお店が異様に多い。家の傍にはカゴ問屋があり、まさに魔境である。隣街に行けば、世界中のカゴが揃うカゴ専門店がある。なんてことだ。これは何かの罠なのか。

そして今日も古道具屋さんで、いい具合に艶が出た、スイスの大きなアンティークカゴを見つけて迷わず購入した。新しい物よりも時代を経て艶が出ている物にぐっとくる。

そういえば、ペルーを旅していたときに、チチカカ湖に暮らすインディヘナの女性たちは、大きなカゴを抱えて市場でジャガイモなんかを売っていたっけ。

一番印象的だったのは、トトラで編んだカゴみたいな大きな舟が湖に浮かんでいたこと。乗員客たちを見送るインディヘナの女性たちが、ゆったりした踊りとともに天高くこだます祈りのような唄を披露してくれた。あのときに見た、空と湖の青さ、彼女たちの纏う色鮮やかな民族衣装、腰まである艶やかな黒髪のコントラストとの美しさは一生忘れないと思う。

再度ペルーを訪れることがあるのならば、超でっかいトトラ舟に乗って、チチカカ湖を気の済むまで漂いたい。